白雪姫の王子様

12月上旬のとある日。

俺と翔は、病院の前で待っていた。

吐く息が白い。

「寒すぎだろ……」

翔は、さっきから文句しか言っていない。

「早くしてくれ〜」

今日は、雪が外へ出る日だった。

準備があるから、
俺たちは莉子に病院の外へ追い出されたのだ。

「なんで外なんだよ……」

翔はまだブツブツ言っている。

「せめてロビーで待たせろって」

まぁ、言ってることは分からなくもない。

そうして俺たちは、冷たい風に耐えながら、
雪たちを待っていた。

数十分後。

「お待たせ〜!」

莉子の声が聞こえる。

顔を上げる。

でも、雪の姿は見えなかった。

恥ずかしいのか、莉子の後ろへ隠れている。

その後ろには、兄貴と、雪の両親もいた。

兄貴は雪に目線を合わせて、

「絶対、無理しないこと」

真剣な声で注意を伝えている。

雪の両親は、
少し不安そうにその様子を見守っていた。

雪の父親に会うのは、今日が初めてだった。

でも、その雪の父親は優しく笑って、

「雪をよろしく」

そう言ってくれた。

その言葉が、少しだけ胸に残る。

兄貴との話を終えると、
雪がゆっくりこちらへ歩いてきた。

その瞬間、言葉を失う。

制服姿。

真っ赤なマフラー。

莉子がメイクしたのか、
頬はほんのりピンクに染まり、
唇も綺麗な赤色をしていた。

髪も少しだけ巻かれている。

初めて見る、“普通の女の子”みたいな雪。

いや――

普通なんかじゃない。

綺麗すぎて、目が離せなかった。

雪は俺の前まで来ると、少しうつむきながら言った。

「……どうかな?」

恥ずかしそうな声。

「似合ってる」

それしか言えなかった。

……なんで、

もっと気の利いたこと言えねぇんだよ。

そんな俺をよそに、

「可愛すぎるって!!」

翔と莉子が大騒ぎし始めた。

「さすが私!」

「よっ、莉子様〜!」

誇らしげな莉子と、それを持ち上げる翔。

……何やってんだ、こいつら。

俺は二人から少し距離を取る。

でも、雪は楽しそうに笑っていた。

その顔を見ると、まぁいいかと思ってしまう。

ここで騒いでいても始まらない。

俺たち四人は、
兄貴と雪の両親に見送られながら、
目的地行きのバスへ乗り込む。

赤いマフラーが、冬の風に揺れた。