白雪姫の王子様

好き……。


今まで、考えたことなかった。


違う。


「私、今まで、そんな感情持っちゃいけないと思ってたから……」

初めて口にした、私の本音だった。

「どうして?」

「だって、いつ死ぬかわからない」

「……」

そんな私の言葉に、莉子さんは、
目を見開いた。

今まで、「好き」を考えてこなかったのか。

それはーー

「それに、私のせいで悲しむ人が増えるのが嫌っ」

布団をぎゅっと掴む。

「いつ死ぬかわからないなんて、みんな同じだよ」

莉子さんは、
少し怒りがこもったような表情をして言った。

それはそう。

事故や事件。

いつ、何で命を落とすかなんて、
誰にもわからない。


でも……

私は死ぬことが、命の期限が、決まっている。


「それに、そうやって、自分ばっかり不幸そうにしてるの、ムカつく」

「え?」

「なんで、諦めちゃってるの?」

「……何を?」

「生きること」

その言葉に驚く。

考えたことがなかったから。

自分の命の期限は決まっていて、
比例するように、体も弱くなっている。

「蓮はさ」

莉子さんは、どこか苦しそうな、
震える声で話しはじめた。

「あんたが“やりたいこと全部叶える“って言ってた」

全部を叶える……?

やりたいことリスト。

あれは……本当は……

「それだけ、あんたのこと思ってんの、蓮は」

まっすぐな莉子さんの瞳。

知らなかった、
蓮くんがそこまで考えてくれていたなんて。

そんな蓮くんの想いに気づけなかった自分に、
腹が立つ。

「ウチは昨日まで蓮のこと“好きだった“」

突然の莉子さんの言葉に、
一瞬驚いたが、理解できた気がした。

初めて会った時や昨日の莉子さんの、
言動、鋭い視線。

それは、蓮くんのことが好きだったからだったんだ。

でも好き“だった“って?

そんなに時間は経っていない。

それなのに、莉子さんの蓮くんへの想いは、
そんなにも簡単に変わってしまうものなのだろうか?