白雪姫の王子様

私たちは、長い間見つめ合っていた。

この幸せな時間を、噛み締めるみたいに。

しばらくして、ゆっくりと体を離す。

蓮くんは、少し照れたように、
ベッドの端へ腰掛けた。

「実は……」

蓮くんはぽつりと、話し始める。

私に会いに来なくなった理由。

莉子や翔くんとのこと。

家族のこと。

学校へ行けなくなるほど、苦しくなっていたこと。

全部、ちゃんと話してくれた。

蓮くんは、「俺は逃げてばっかりだ」って言う。

でも、私にはそう思えなかった。

怖くても、苦しくても、
ちゃんと戻ってきてくれたから。

蓮くんは、本当に優しい人なんだ。

気づけば、私は蓮くんの頭をそっと撫でていた。

「……急にどうしたんだよ」

びっくりしたみたいに、蓮くんがこっちを見る。

その顔が、なんだか可愛くて。

思わず、笑ってしまった。

すると蓮くんは、少し恥ずかしそうに顔を逸らす。

そんな反応が嬉しくて、もっと意地悪したくなる。

もう少し近づこうとした、そのとき――


ピコン。


突然、蓮くんのスマホが鳴った。

でも、なぜか蓮くんは画面を見ようとしない。

「……?」

不思議に思って、
私は蓮くんからスマホを取り上げた。

「おいっ」

慌てる声。

画面を見る。

そこには、大量の通知。

しかも全部、莉子と翔くんからだった。

きっと、二人ともずっと心配してたんだ。

「返信しなさい」

私はそう言って、スマホを蓮くんに返した。

蓮くんは、
露骨に嫌そうな顔をしながら画面を開く。

すると、大量のメッセージが一気に表示された。

『生きてる?』

『無視すんな!』

『雪ちゃんどうなった!?』

思わず、少し笑ってしまう。

蓮くんは面倒くさそうにしながらも、

今日のこと。
 
また病院へ来てほしいこと。

ちゃんと伝えてくれた。

すると、すぐ既読がつく。

『やっと仲直りしたのか!』

『明日からまた行くからね!』

勢いのあるメッセージ。

でも、蓮くんは何も返信しようとしない。

「……」

私はもう一度、スマホを取り上げた。

「おい、雪」

気にせず、私は勝手に文字を打ち込む。

『楽しみにしてるね』

送信。

「ちゃんと返信しなきゃダメだよ」

そう言って、スマホを返した。

蓮くんは少し気まずそうに、頭をかいている。

きっと、蓮くんなりに、
色んな気持ちがあったんだと思う。

でも、またみんなで笑える気がして。

それが、すごく嬉しかった。