白雪姫の王子様

今日も、お母さんが来る日だ。

私は、心配をかけないように、
ゆっくりとベッドから体を起こした。

少しだけ苦しいけれど、ちゃんと笑わなきゃ。

病室の扉が開く。

いつもと同じように。

――そう、思っていた。

「……雪」

突然、聞こえた声に、
心臓が止まりそうになった。

そこに立っていたのは、お母さんじゃなかった。

会いたくて、

会いたくて、

たまらなかった人。

もう、二度と会えないと思っていた人。

蓮くんだった。

姿を見た瞬間、
今まで押し込めていた感情が、一気に溢れ出す。

不安。

寂しさ。

苦しさ。

そして、また会えた嬉しさ。

涙が、止まらなくなっていた。

こんな顔、蓮くんに見られたくない。

そう思って、
顔を逸らそうとした、その瞬間――

蓮くんが、駆け寄ってきた。

そして、強く抱きしめられる。

「ごめん……」

震えた声。

「ほんとに、ごめん……」

でも、うまく聞き取れなかった。

だって、

胸が苦しくて、

息が上手くできなくて。

「もう……」

涙で声が詰まる。

「会えないって……思って……」

伝えたいのに、全然うまく言葉にならない。

でも、そんな私に、

「分かってる」

蓮くんは優しく言った。

頭を、そっと撫でてくれる。

「もう、どこにも行かない」

さらに強く抱きしめられる。

「もう俺は、雪から逃げない」

その言葉が、どうしようもなく嬉しかった。

私は、ゆっくり顔を上げる。

きっと、今の私はひどい顔だ。

それなのに、蓮くんは優しく笑っていた。

「……愛してる」

突然の言葉。

胸の鼓動が、一気に速くなる。

驚きと、嬉しさが、同時に押し寄せてくる。

どうしたらいいか分からない。

そんな私の頬に、蓮くんがそっと触れた。

「私も……」

気づけば、言葉が零れていた。

「愛してる」

ゆっくりと、蓮くんとの距離が近づいていく。

そして――

優しく、唇が重なった。

温かかった。

さっきまで苦しかった胸が、
少しずつ落ち着いていく。

その瞬間、窓から吹いた風で、
カーテンが大きく揺れた。

まるで、私たちを隠してくれるみたいに。


唇が離れる。


見つめ合う。

恥ずかしくて、

でも、

すごく嬉しかった。

蓮くんは、優しく私を見つめている。

幸せな時間が、ゆっくり流れていく。


――このまま、時間が止まってしまえばいいのに。