白雪姫の王子様

メッセージを送った次の日。

教室に入った瞬間、

「蓮!」

翔と莉子が、勢いよく駆け寄ってきた。

その顔を見た瞬間、分かる。

……納得してない。

「お前、どういうつもりだよ」

翔が、珍しく真剣な顔をしている。

「雪ちゃん、待ってるに決まってんじゃん」

「……」

「“もう関わるのやめよう”って何?」

莉子も、俺に問いかける。

怒っているというより、苦しそうな声だった。

「蓮、本気で言ってんの?」

「……本気だよ」

短く答える。

「なんで!」

莉子の声が、大きくなる。

教室の視線が、一瞬こっちを向いた。

でも、そんなこと、どうでもよかった。

「雪のためだ」

自分でも驚くくらい、冷たい声だった。

「は?」

翔が眉をひそめる。

「どこがだよ」

「俺たちが関われば、雪に負担がかかる」
「親とも揉める」
「病院にも迷惑かける」
「だから――」

「だから離れるって?」

 莉子が遮る。

「それ、雪が望んでんの?」

言葉が詰まる。

でも、

「……関係ない」

無理やり、言葉を押し出す。

「一番安全なんだよ、それが」

そう。

これでいい。

これが正しい。

「蓮」

翔が、低い声で言う。

「お前さ」

少しの間。

「逃げてるだけじゃねぇの」

その言葉が、胸に刺さる。

「……うるせぇよ」

吐き捨てるように言う。

「俺はもう決めた」

「蓮!」

莉子が呼ぶ。

でも、止まらない。

止まったら、揺らぐから。

教室を出る。

二人の声が、後ろから聞こえてくる。

でも、頭には入ってこなかった。


……これは、雪のためなんだ。


そうしないと、自分が壊れそうだった。

だから、何度も、自分に言い聞かせた。