白雪姫の王子様

夏休みの間、雪は何度か院内を歩いていたらしい。

俺と一緒に庭を歩いたり、
一人で少しだけ散歩したり。

そのおかげで、病院内なら、
ある程度自由に動けるようになっていた。

雪は制服から院内着に戻っている。

「制服は、本番用」

そう言って、少しだけ照れていた。

カフェは、よくあるチェーン店だった。

俺たち三人が慣れた様子で注文する中、
雪は、メニューとにらめっこしていた。

「……えっと、どうやって頼むの?」

少し焦った声。

そんな姿が、なんだか新鮮で。

……可愛いと思ってしまう。

もう少し見ていたい気もしたけど、

「雪、コーヒー飲めるか?」

声をかける。

「コーヒーは……苦いから嫌い」

「じゃあ紅茶は?」

「紅茶は好き!」

雪の顔が、ぱっと顔が明るくなる。

「じゃあ、それにしとけ」

店員に注文する。

「……ありがと」

雪が、少し身を乗り出してくる。

「なんだよ」

「助けてくれて、ありがとう」

そう言って、無邪気に笑う。

「……」

思わず、言葉が止まる。

……だから、反則なんだよ。
そういう顔。

そのあと、四人で同じテーブルに座った。

くだらない話をして、
笑って、
またくだらないことで盛り上がる。

いつもと同じはずなのに、

どこか違った。

病室じゃないだけで、こんなにも空気が変わる。

みんな、少しだけ生き生きして見えた。

そして――

雪も。