白雪姫の王子様

重くなりかけた空気を断ち切ったのは、翔だった。

「確かに、いきなりは無理だよな」

「うん……」

雪が小さく頷く。

「じゃあさ、病院内で練習すればよくね?」

「……練習?」

翔の言葉が理解できず、首を傾げる雪。

「練習って言うのはーー」

「分かった!」

莉子が、勢いよく翔の言葉を遮る。

「病院にカフェとかある?」

「……たぶん、ある」

「じゃあ、そこ行こ」

即決だった。

「まずはそこで、“放課後ごっこ“」

「放課後ごっこ?」

雪はまだ、ピンときていないようだ。

「カフェでさ、みんなが普通にやってることをやるの」

「……みんなが普通にやってること」

雪が、ぽつりと呟く。

少しずつ、意味が繋がっていく。

「そうそう」

翔も莉子の話に、乗っかる。

「それでさ、医者に“いけそうじゃね?“って思わせる」

「外出の練習ってこと」

「要するにーー」

「外に出るための作戦ね」

また莉子が、いいところを持っていく。

「……お前さ」

翔が、不満そうに莉子を睨む。

「遅いのが悪い」

翔が言いかけた言葉を、さらっと返す莉子。

「なんだよそれ」

ブツブツ文句を言う翔。

でも、その空気は、さっきまでよりずっと軽かった。

「雪、行こう」

俺は自然と雪に、手を差し出していた。

雪は一瞬だけ驚いた顔をしたが、
俺の手を、そっと取る。

雪が俺を見上げて、少し微笑む。

「……っ」


その顔は反則だろ……。


俺は赤くなりかけた、顔を背ける。

雪はそんな俺を気にも留めていない。

でも、さっきの雪の顔は、
前より、少しだけ前を向いていた。