次の日。
早速、莉子は制服を雪に着せていた。
「男子は出てって」
と、病室から追い出された。
しばらくすると、莉子の明るい声が聞こえてきた。
「男子入っていいよ〜」
病室の中に入る。
雪は恥ずかしそうに、莉子の後ろに隠れている。
「ほら」
莉子は優しく、雪の背中を押した。
「ど、どうかな……?」
恥ずかしそうに、うつむく雪。
ぎゅっと、スカートの裾を掴んでいる。
そこには、不安や少しの葛藤が見えた。
でも、それより、雪の制服姿は似合っていて……
雪はゆっくりと、俺の目を見る。
「……っ」
思わず目を逸らしてしまった。
雪を傷つけてしまっただろうか。
でも、今の俺には、
雪にどんな言葉をかけるべきか、分からなかった。
「めっちゃ似合うじゃん!」
そんな俺をよそに、翔は雪に真っ直ぐな言葉をかけた。
「可愛いよ!」
あぁ……
情けねぇ。
なんで、翔みたいに、
真っ直ぐ言葉を伝えられないのだろうか……
「でしょ〜」
「うんうん」
「これで、メイクしたら完璧」
黙り込んでいる俺をよそに、
翔と莉子は楽しそうに話を盛り上げていく。
「ねぇ、雪は制服着て何がしたい?」
「え?」
雪は制服を着ることまでしか、
考えていなかったのだろう。
きっと、その先なんて考えられなかったんだ。
「何がしたいか……」
雪はベットに座り込み、考え込む。
そして、小さな声で言った。
「みんなと、同じことがしたい……」
みんなと、同じこと。
「あ、学校は無理なのは分かってるよ」
どこか、寂しそうな雪。
「放課後に、みんながやってること、かな」
「放課後に、俺たちが……?」
「うん。それを一緒にやりたい」
「いいじゃん!」
莉子が、ぱっと明るい声を出す。
「放課後……何してたっけ、俺ら」
翔が首を傾げる。
確かに、言われるとよく分からない。
「カフェ行ったり、買い物したり、ゲーセンとか、プリとか?」
「映画とか、カラオケも行くかも」
「私、カラオケ行ったことない!」
雪の目が、輝く。
「じゃあ、全部やろう!」
三人とも楽しそうに、盛り上がっている。
でもーー
「待て」
「なんだよ」
不満そうに翔が言う。
「雪、そんな一気に動けるわけねぇだろ」
そんな俺の言葉に、雪はうつむく。
雪にとって、俺の言葉がつらいのは分かっている。
でも、現実的に考えないといけない。
「まずは、医者とか親に許可ーー」
「私の親は、許可しないと思う」
雪に言葉を遮られる。
「……なんでそう思うの?」
莉子が、ゆっくりしゃがみ込む。
そして、雪と目線を合わせて、優しく聞く。
「それは……」
雪の声が、少し震える。
布団を、強く握る。
「私のお父さんとお母さんは……私と、向き合ってくれないの」
空気が、一気に静まる。
「どいうこと?」
「……いつもね」
雪が、ゆっくりと話し始める。
「“ちゃんと治るよ“って、“だからもう少し頑張ろう“って……そればっかり」
雪の表情から、感情が読み取れない。
「私に向ける笑顔も、なんか……」
雪は、一生懸命に言葉を探して、
「作り物みたいで」
誰も、何も言うことができなかった。
「……本当は」
雪は小さな声で、続ける。
「私が生きるのを一番諦めているのは、二人なんだ……」
静かになる。
俺は、何も言えなかった。
……だって。
俺も同じだったから。
余命があるって分かって、
それを理由に、
いろんなことから逃げた。
結局、雪のことをちゃんと、ちゃんと見てなかった。
「……」
言葉が出ない。
でもーー
このまま黙ってるのは、違う気がした。
「……じゃあさ」
言葉が溢れていた。
「見せてやればいいだろ」
「……え?」
雪が顔を上げる。
「普通に外出て、普通に笑って」
俺の言葉に、雪は目を見開く。
その瞳には、驚きと、少しの希望が映っていた。
「ちゃんと生きてること」
俺自身も、言いながら驚く。
でも、もう、逃げるのはやめる。
「親にも、医者にも全部、納得させればいい」
くそっ。
なんで、こんな不器用な言い方しか出来ねぇんだ。
それでも、自分の本心を、真っ直ぐに言葉を伝えることができた気がした。
早速、莉子は制服を雪に着せていた。
「男子は出てって」
と、病室から追い出された。
しばらくすると、莉子の明るい声が聞こえてきた。
「男子入っていいよ〜」
病室の中に入る。
雪は恥ずかしそうに、莉子の後ろに隠れている。
「ほら」
莉子は優しく、雪の背中を押した。
「ど、どうかな……?」
恥ずかしそうに、うつむく雪。
ぎゅっと、スカートの裾を掴んでいる。
そこには、不安や少しの葛藤が見えた。
でも、それより、雪の制服姿は似合っていて……
雪はゆっくりと、俺の目を見る。
「……っ」
思わず目を逸らしてしまった。
雪を傷つけてしまっただろうか。
でも、今の俺には、
雪にどんな言葉をかけるべきか、分からなかった。
「めっちゃ似合うじゃん!」
そんな俺をよそに、翔は雪に真っ直ぐな言葉をかけた。
「可愛いよ!」
あぁ……
情けねぇ。
なんで、翔みたいに、
真っ直ぐ言葉を伝えられないのだろうか……
「でしょ〜」
「うんうん」
「これで、メイクしたら完璧」
黙り込んでいる俺をよそに、
翔と莉子は楽しそうに話を盛り上げていく。
「ねぇ、雪は制服着て何がしたい?」
「え?」
雪は制服を着ることまでしか、
考えていなかったのだろう。
きっと、その先なんて考えられなかったんだ。
「何がしたいか……」
雪はベットに座り込み、考え込む。
そして、小さな声で言った。
「みんなと、同じことがしたい……」
みんなと、同じこと。
「あ、学校は無理なのは分かってるよ」
どこか、寂しそうな雪。
「放課後に、みんながやってること、かな」
「放課後に、俺たちが……?」
「うん。それを一緒にやりたい」
「いいじゃん!」
莉子が、ぱっと明るい声を出す。
「放課後……何してたっけ、俺ら」
翔が首を傾げる。
確かに、言われるとよく分からない。
「カフェ行ったり、買い物したり、ゲーセンとか、プリとか?」
「映画とか、カラオケも行くかも」
「私、カラオケ行ったことない!」
雪の目が、輝く。
「じゃあ、全部やろう!」
三人とも楽しそうに、盛り上がっている。
でもーー
「待て」
「なんだよ」
不満そうに翔が言う。
「雪、そんな一気に動けるわけねぇだろ」
そんな俺の言葉に、雪はうつむく。
雪にとって、俺の言葉がつらいのは分かっている。
でも、現実的に考えないといけない。
「まずは、医者とか親に許可ーー」
「私の親は、許可しないと思う」
雪に言葉を遮られる。
「……なんでそう思うの?」
莉子が、ゆっくりしゃがみ込む。
そして、雪と目線を合わせて、優しく聞く。
「それは……」
雪の声が、少し震える。
布団を、強く握る。
「私のお父さんとお母さんは……私と、向き合ってくれないの」
空気が、一気に静まる。
「どいうこと?」
「……いつもね」
雪が、ゆっくりと話し始める。
「“ちゃんと治るよ“って、“だからもう少し頑張ろう“って……そればっかり」
雪の表情から、感情が読み取れない。
「私に向ける笑顔も、なんか……」
雪は、一生懸命に言葉を探して、
「作り物みたいで」
誰も、何も言うことができなかった。
「……本当は」
雪は小さな声で、続ける。
「私が生きるのを一番諦めているのは、二人なんだ……」
静かになる。
俺は、何も言えなかった。
……だって。
俺も同じだったから。
余命があるって分かって、
それを理由に、
いろんなことから逃げた。
結局、雪のことをちゃんと、ちゃんと見てなかった。
「……」
言葉が出ない。
でもーー
このまま黙ってるのは、違う気がした。
「……じゃあさ」
言葉が溢れていた。
「見せてやればいいだろ」
「……え?」
雪が顔を上げる。
「普通に外出て、普通に笑って」
俺の言葉に、雪は目を見開く。
その瞳には、驚きと、少しの希望が映っていた。
「ちゃんと生きてること」
俺自身も、言いながら驚く。
でも、もう、逃げるのはやめる。
「親にも、医者にも全部、納得させればいい」
くそっ。
なんで、こんな不器用な言い方しか出来ねぇんだ。
それでも、自分の本心を、真っ直ぐに言葉を伝えることができた気がした。
