白雪姫の王子様

今日も、病院の廊下を歩く。

なぜか俺の隣には、楽しそうに歩く翔がいる。

「毎日、通うんだな」

ニヤニヤしながら言ってくる。

「うるせぇ」

翔の冷やかしに、適当に返す。

でも、こんな会話も悪くないのかもしれない。病室の前にたどり着く。

……と、中から、楽しそうな声が聞こえてきた。

雪と、莉子の声。

「……なんで先に来てんだよ」

小さく呟く。

別に関係ないのに。

なぜか、少し悔しいと思ってしまった。

女子二人の会話に入るのも、なんか気まずい。

……帰るか。

そう思って、背を向けかけた時だった。

「よ!」

翔が、勢いよく扉を開けた。

「……っ」

雪と視線が合う。

でもーー

今日の雪は、いつもと違っていた。

「雪ちゃん、めっちゃ可愛いじゃん!」

翔がそのまま駆け寄る。

「いいでしょ〜」

莉子が少し得意げにいう。

「莉子に、メイクしてもらったの」

雪が少し照れたように笑う。

「白雪姫みたいじゃない?」

「だな!」

盛り上がる、莉子と翔。

「……」

俺は、入り口に立ち止まったまま。

なんて言って入っていけばいいのか、分からない。

「……蓮くん」

小さな声で呼ばれる。

雪が、こっちを見ていた。

少しだけ、不安そうな顔。


……そういう顔、すんなよ。


ゆっくりと、近づく。

「どう……かな?」

ベットに座ったまま、
雪が、少しだけ見上げてくる。

「どうって……」

言葉に詰まる。

白い肌に、
桃色の頬、
赤い唇。

確かにーー

白雪姫みたいで。

でも、その言葉を、伝えられなくて。

「……きれい……だと思う」

言ってすぐ、目を逸らす。

「ヒューヒュー」

「蓮、照れてんじゃん」

すぐに茶化してくる。

「照れてねぇし」

反射で返す。

でもーー

「蓮くん、ありがとう」

雪が嬉しそうに言った。

もう一度、雪を見る。

やっぱり、きれいで。

でも、その言葉は、もう言えなかった。