白雪姫の王子様

なに言ってんだ、俺。

こんなこと、キャラでもねぇだろ。


なのに、勝手に口が動いていた。

雪は驚いた顔をしたまま、俺を見て固まっている。


……やめろ。そんなふうに見るな。

こっちは今、自分がなに言ったかも受け入れられないでいるのに。


「……蓮くん」

小さな声。

「それって、本気で言ってる?」

雪の声は静かで、
真剣な表情で俺をまっすぐに見ている。

俺の言葉を疑っているわけじゃない。

でも、どこか信じきれないみたいな響きだった。

「……できるかどうかは知らねぇけど」

雪から視線を逸らし、無愛想に言う。

なんで俺はこんな言い方しかできねぇんだよ。


……自分で自分にイラつく。


それでも雪は、少しだけ笑った。

「じゃあ、ひとつだけ」

「お、おう……」

自分で約束したくせに、叶えてやれるか、
だんだん不安になってくる。

「一緒にアイス、食べてみたい」

たったそれだけの願いだった。

簡単なはずなのに、
なぜか、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。

「……それくらいなら」

ぼそっと答える。

「ありがと」

雪はそう言って、嬉しそうに笑った。

その笑顔を見た瞬間、俺は気づいてしまった。

もうーー

引き返せない。


その日は、なんだか雪の顔をみることができず、
そのまま病室を出た。