ノックの音。
「どうぞ」
そう言うと、ドアが開いた。
「……よ」
「れ、蓮くん!」
久しぶりに会う蓮くん。
急に鼓動が早くなるのを感じる。
蓮くんがゆっくり近づいてくる。
嬉しいのに、なんて言えばいいかわからない。
少しの沈黙。
その時、蓮くんの後ろに、ふたつの人かげが見えた。
同じ制服を着ている男の子と、もう1人、女の子。
「……え?」
思わず声が出る。
「ん?」
蓮くんが振り返る。
「え、なんでお前らいんの?」
驚きとイラつきが混ざった声。
「ばれなくてよかった〜」
軽い声で、男の人が笑う。
「は?ふざけんな」
あからさまに、蓮くんがイラついている。
「帰れよ」
「お邪魔しまーす」
男の人はずかずかと、病室に入ってくる。
「やめろって」
慌てて止めようとする蓮くん。
でも、そのまま私の方へ近づいてくる。
「初めまして!俺は相澤 翔。蓮とは幼馴染で今も同じクラスで仲良くしてやってる」
と、明るく笑いながら言った。
「あ、私は……白石 雪です」
少しだけ戸惑いながら答える。
「とりあえず、よろしくな」
そう言って、私の手を取る。
「あ、はい……」
でも。
もう1人の女の子は、何も言わなかった。
ただ、じっとこっちを見ている。
その視線が、少し痛い。
「で、一ノ瀬 莉子」
翔さんが軽く言う。
「……よろしく、お願いします」
そう言って彼女の顔を見る。
ーー睨まれた。
思わず、体が少しだけ強張る。
何も言われていないのに、
その目だけで、伝わってくるものがあった。
「てかさ」
翔さんが空気を変えるように言う。
「こんなに可愛い子だったら、蓮が夢中になるのわかるわ〜」
「そんなんじゃねぇよ」
すぐに、蓮くんが返す。
少しだけ、強い声。
「はいはい」
翔さんは軽く流す。
「もう帰るから、そんな顔すんなって」
翔さんはそう言って、莉子さんを連れて、
病室を出て行った。
扉が閉まる。
「……」
違う空気が、少しだけ残っていた。
さっきまでの賑やかさが嘘みたいに、静かだ。
「……ごめん」
気づいたら、蓮くんに謝っていた。
「は?」
蓮くんが、少しだけ眉をひそめる。
「なんでお前が謝んだよ」
「だって……」
うまく言葉にできない。
「あいつらが勝手についてきて、騒いでったんだ。
つけられてることに気づかないで連れてきた俺が悪い」
「でも、空気も悪くしちゃったかなって……」
そう私がうつむいていると、
優しく頭に手を置かれた。
「雪は悪くない。だから気にするな」
やっぱり、蓮くんは優しい。
「今日は“やりたいこと“なにやるんだ?」
その言葉を聞いて、嬉しくなった。
学校へ行っていても、
私のことを忘れずに考えてくれていた。
「今日は大丈夫」
「え?」
蓮くんは不思議そうに、こちらを見ている。
「それに、翔さんはフレンドリーで話しやすそうだし、今回は莉子さんとお話しできなかったから、今度はお話ししたいな〜」
明るく笑って見せた。
でも、この言葉には少しの嘘が、混ざっている。
莉子さんのあの視線を浴びるのは、いや。
私は本当は蓮くんと、二人がいいんだ。
そんなことを思いながら、蓮くんと他愛のない話をした。
私の人生にとって、この時間が一番幸せなんだ。
