白雪姫の王子様

蓮くんの学校が始まって数日。

病室はいつも通り静かだった。

何も変わっていないはずなのに、
少しだけ部屋が広く感じる。

蓮くんがいない。

ベットの上に座って、スケッチブックを手に取る。

ページをめくっていくと、
蓮くんの下手くそな絵が出てきて、
思わず笑ってしまった。

でも、今日も蓮くんの声は聞こえてこない。

ふと窓の外を見る。

今日も空の絵を描こう。

いつもと同じように鉛筆を手に取る。

同じはずなのに、少しだけ、寂しい。

「……ちゃんと行ってるかな」

ぽつりと、独り言がこぼれる。

蓮くんは学校に、サボらず行くって約束してくれた。

きっと、私の分も勉強して来てくれるはず。

「……行ってるよね」

自分で言って、少しだけ笑った。

あの人、不器用だけど、
ちゃんと約束守る人だと思う。

ふと引き出しにしまってある、ノートを取り出した。

ページを開く。

「本当にやりたいこと、ちゃんと書いておこうかな……」

私は、夏休み中、蓮くんに嘘をついていた。

だって……

ノートには何も、書いていないから。

蓮くんと過ごす毎日は、あっという間だった。

でも、ちゃんと覚えてる。

アイスの冷たさも、
外の風も、
空の青さも。

全部。

胸の奥に、ちゃんと残ってる。

「……また来てくれるかな」

ぽつりと、呟く。