白雪姫の王子様

「なんで……」

雪の声は、少し震えている。

「わかったの?」

声は震えているけれど、それは、
怯えている声ではなかった。

そして、雪は寂しそうな顔をしながら、
話し始めた。

「小さい頃から病院にいるから、外に出たことが、
ほとんどないの」

雪は、続けて言う。

「学校も行ってないから、友だちもいなくって」

そう、雪は冗談っぽく笑った。

でも、その奥にあるものは、隠しきれていなかった。

「だから、一緒にお散歩とかしてくれる人もいなかったんだ」

軽く言っているのに、やけに重く聞こえる。

「それにね」

少しだけ間を置いて、

「家族も、私の病気と……私自身と、ちゃんと向き合ってくれなくて」

と、困ったように笑って言った。

でも、その笑い方は、さっきより悲しそうに見えた。


……なんて言えばいいんだよ。


言葉が見つからない。

励ますのも違う気がするし、
下手なこと言ったら、壊れそうで。

何も言えないまま、立ち尽くす。

「だからね、最近は全然外に出てなかったの」

雪はそう言って、また、明るく笑った。

その“明るさ“が、
さっきよりもずっと、苦しかった。少しの沈黙。

「……行くか」

気づけば、口が動いていた。

雪が、きょとんとした顔で俺をみる。

「外」

短く言う。

「……ほんとに?」

雪の声は、驚きと少しの不安を含んでいるようだった。

「ちょっとだけな」

目を逸らしたまま答える。

「無理そうだったら、すぐ戻るぞ」

雪は少しうつむき、ゆっくりとうなずいた。

その時の、雪の顔は見えなかった。

そのせいで、雪の感情がわからない。


俺でよかったのか……


そんな不安が、よぎった。