白雪姫の王子様

その日、私はベッドの上で空を描いていた。

ふと顔を上げると、病室の扉が少しだけ開いているのことに気がついた。

誰かが、こっちを見ている。

扉の向こうには、制服の男の子。

こちらを見て、目が合った瞬間目をそらす。

でも、その不器用な仕草が少しだけ気になった。

そして私は、思わず声をかけてしまった。

「あの……何か用ですか?」

「い、いや、別に……通りかかっただけ。」

素っ気ない返事。

「絵、描いてたんだろ。」

「うん。空、描いてた」

そう言って、少し絵を見せた。

「そうか……」

でも、彼は私の絵は全く見ずに、
ただ気まずそうに、立っている。

その姿が、さらに私の興味を引いた。


彼のことを、知りたい。


「あの……あなた、ボランティアの人?」

「……いや、違う」

「そうなんだ。じゃあ、なんでここに?」

「さあ。勝手に連れてこられただけ。じゃあ」

会話はそれだけだった。

でも、なぜかその背中が遠ざかるのが少しだけ寂しくて、私は声をかけた。

「また、通りかかってね」


私を、見つめていた彼は、
一体、何者だったんだろうか。

ふと、私は小ささ頃の夢を思い出す。

王子様が私を迎えに気くれる。

白雪姫が大好きな幼い私が、
思い描いた、儚い夢。