失恋には、甘いものより橋立君。

この男の言い分は分かる。
痛いほど分かる。

私だって、響は生き甲斐みたいなものだし、諦めきれないし、何よりこの先、響以外を好きになれる気がしないくらい、響のことを想ってる。

だけど、だけど、響は遙香のことしか見ていない。

私がどんなに好きを叫んでも、絶対に届かない。

ただ遙香だけを見つめてる。
私を振り返ることもなく…。

遙香だって、響だけを見つめてるんだ。

この俺様男のことを振り返ることだってきっとないんだ。

私とこの男、置かれてる立場が同じなんだな。

「遙香は、弟の響のことが好きなんです。」

「え…?」

男は、あり得ないという顔をしている。
そりゃあそうだろうな。

「あり得ないと思うかもしれませんが事実なんです。私も今日知りました。昼休み、空き教室で2人がキスしている所を見てしまったんです。」

「ウソだろう。」

「ウソじゃありません。」

「ウソだと言ってくれ!」

「事実です。」 

本当は、言わない方が良いのかもしれない。
世の中には、知らない方が良いこともたくさんあるから。

でも、知らなかったら知らなかったらで、この男はずっと遙香を諦めることはなく、アタックをし続けるのだろう。

だけど、何かしらの形で事実を知った時、この男が悲しみに暮れるのは間違いない。 

それはもっとしんどいことだろう。

もし今以上に想いが加速していたら、もっと苦しいだろうから。
今知っておく方が、こいつのためだ。