大きくてしなやかな指先が触れた瞬間、額に汗が滲んだ。

雪菜を押し飛ばして逃げ出したい気持ちをグッと我慢して、「ちょっと、トイレに行ってくるね」と、ソファから立ち上がったのだった。

昼ごはんの準備は私がした。
カレーを温めてサラダを作るだけだったし、カレーは朝も一緒に食べたから妙なものは混入していないはずだったから。

「昼からはどこかに出かけない?」
カレーを食べている雪菜へ、恐る恐る質問した。

昼と言っても、もう1時を過ぎた時間だ。
朝が遅かったからまだあまりお腹も空いていなかった。

「いいけど、どこに?」
「か、買い物でも行こうよ。最近服とか買ってないんだよね」
嘘じゃなかった。

剛志とのことがあってから、買い物をする気にはなれなかった。
必要最低限の買い物と、ちょっとしたお菓子くらいしか買っていない。

「服ならウチのを貸してあげようか?」
「え?」