それは、それは、冷たく重い言葉。
ひゅっと誰かの喉音が鳴る。
「つづちゃん」
「う、ん」
声が吃るけど、返事だけはなんとかした。
「すまへん、俺とつづちゃんちょい抜けるわ。適当に誤魔化しといて」
「は、はい!」
近くにいたクラスメイトに渚君はそう伝えると、るり様を睥睨し、
「頭冷やせよ」
向けられたのが私じゃないのに何だか泣きそうになった。
「っ」
「るり様!」
「待ってください!」
走り出するり様軍団の後に、
「ちょっといいか?」
渚君の有無を言わせない空気に、黙って頷くしかなかった。
ーーー真剣な話するんだったら、ね。
「生徒会室勝手につかちゃってええんか?」
「うん、大丈夫」
さっきの恐ろしい渚君はなりを顰めていて、少しだけ安心する。
授業中なら今清水君もいないだろうし、真剣な話するんだったらとここかなと。
生徒会室に備え付けてある長椅子とローテーブルが置いてある場所に対面となって座る。
渚君はぐでんとソファーの背凭れに頭を預けて「なんか疲れたわあ」と独りごちた。
改まって私は、
「渚君」
「ん?」
「助けてくれてありがとう」
無言でここに来たせいで、お礼を言い損ねたことが気になって仕方がなかったから漸く言えとホッとした。
渚君は後ろに向いていた顔をスッと私に戻して、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる。



