過つは彼の性、許すは我の心 壱



 普段の私なら気遅れマシマシだが、体育祭準備のデッドラインに立っていて、気が短くなっていた。

 そのおかげで堂々と彼女達の前に立てているのは幸運というべき…いや全然幸運じゃないわ。


「どちら様で?」


 口調に苛立ちを添えると、代表っぽい女性は柳眉を跳ね上げた。

 腕を組んでツンと顎を上げる女の容姿は美しかった。

 校則ギリギリラインを狙うはだけた制服の着こなしに、内側に巻かれた明るいセミロングの髪、メイクは派手すぎないが唇を彩る赤赤としたグロスが目につく。

 印象としては魔女って感じ。

 後ろで控える女達も彼女に似たような様相で、一発で同じグループに所属しているのが分かるぐらいの団体様だ。


「ヤバくね?」

「先生呼んだ方がいいかな」

「馬鹿下手に首突っ込むな」


 教室が俄かに好奇心と野次馬根性でざわつき、私と彼女達の動きを見守っている。ああ、私もそっち側に行きたい。


「あら、貴方があの?」

「あの、が何を指すのか存じ上げませんが」

「私を知らないのね、皆さん聞きまして?」

「ええ、るり様をご存知ないとは」

「頭も容姿も並みのようですし、仕方ないのでは?」

「そんな風に言ってはお可哀想よ」


 ふふ…なんて上品に笑い合っているが、私を馬鹿にして扱き下ろす行為は下品そのもの。


………今回の“虫”は説明しなくても私のことね。