普段の私なら気遅れマシマシだが、体育祭準備のデッドラインに立っていて、気が短くなっていた。
そのおかげで堂々と彼女達の前に立てているのは幸運というべき…いや全然幸運じゃないわ。
「どちら様で?」
口調に苛立ちを添えると、代表っぽい女性は柳眉を跳ね上げた。
腕を組んでツンと顎を上げる女の容姿は美しかった。
校則ギリギリラインを狙うはだけた制服の着こなしに、内側に巻かれた明るいセミロングの髪、メイクは派手すぎないが唇を彩る赤赤としたグロスが目につく。
印象としては魔女って感じ。
後ろで控える女達も彼女に似たような様相で、一発で同じグループに所属しているのが分かるぐらいの団体様だ。
「ヤバくね?」
「先生呼んだ方がいいかな」
「馬鹿下手に首突っ込むな」
教室が俄かに好奇心と野次馬根性でざわつき、私と彼女達の動きを見守っている。ああ、私もそっち側に行きたい。
「あら、貴方があの?」
「あの、が何を指すのか存じ上げませんが」
「私を知らないのね、皆さん聞きまして?」
「ええ、るり様をご存知ないとは」
「頭も容姿も並みのようですし、仕方ないのでは?」
「そんな風に言ってはお可哀想よ」
ふふ…なんて上品に笑い合っているが、私を馬鹿にして扱き下ろす行為は下品そのもの。
………今回の“虫”は説明しなくても私のことね。



