過つは彼の性、許すは我の心 壱



 よくよく周囲を見れば談話室にはかつてない人集りが出来ていた。

 彼等の視線の多くは日に照らされた天條君で、これから雑誌の撮影でもすんの?ってぐらい美しかった。

 寝起きにこの天條君は…キツイ。


「おはよう…天條君…偶々サングラス持ってたりしない?貸して欲しいんだけど」

「持ってないが」

「だよね。因みに天條君寮生だっけ?」

「いいや」

「じゃあ何でここにいるの?」


 リアル目が目がー!になりそうな目を擦りながら聞けば「迎えに来た」と、これまた主語なしに返答してくる。


「誰を、」


 迎えに来たの?そう続ける前に、擦っていた手に誰かの手が触れる。

 白く長い指先、でも節くれだった男の人らしい手。


「お前を」

「…え?」

 
 天條君の手が擦っている私の手に重ねられ、行動を強制的に止められる。


「擦るな、傷つくぞ」


 そして、私の顔に自分の顔を近づけた。周囲から黄色い悲鳴と絶叫半々といったところ。

 長い影が落ちるほどの睫毛と力強い黒い瞳。

 妃帥ちゃんに似てて若干ドギマギ。


「ど、どうしたの」

「目は傷ついてないな」

「…ありがとう。心配してくれたの」


 人が目の前で撃ち殺されても気にしなさそう(酷い)な天條君から気遣うようなことをされると、確かに彼に惚れる人が続出してもおかしくはないなと納得した。