過つは彼の性、許すは我の心 壱


「…なに、してるの?」
 
「え?ほら具合悪いなら乗って?」


 鈴を転がすような声ってこういう声なのかもなあと思いつつ「ほらほら早く早く」と後ろ手で手招きする。


「…待ってあそこにあるの拾って」


 触れただけで折れそうな人差し指が、室内に何個か落ちているビーズを示す。

 内心はいはいと言いながらビーズを拾い上げ、持っていたハンカチに包み「はい」と本人に最後の一個を出す様促した。


「…」

 恐る恐る差し出した最後の一個を他のビーズと一緒に包み「はい。今度は落とさないようにね」と本人の手に握らせる。

 自分の両手で彼女の手を覆うとまたびくりと動くが「ありがとう」と小さな声でお礼を言ってくれた。


「はいじゃあ乗って」


 彼女に声を掛けて、さっさとおんぶする。

 着物って重いはずなのに妙に軽く感じる。あと、甘くて良い匂い。

 
「…何処行くの?」

「取り敢えず保健室行こうか」


 匂いを吸引しようと鼻の穴が膨らみそうなのを堪え、保健室へと足を踏み出した。

 
「…」

「…そう言えば、お名前は?」

「聞くなら、先に自分の名前を言ったら?」

「あーそうだったね、ごめんごめん」


 私の軽い口調に呆れたのか「変な子」と私の首元に顔を埋める。

 変な子に変な子と言われてしまった。


「ーー 唐堂綴(とうどうつづり)デス」

「…ふーん」

「…」

「…」


 え、終わり?

 そこは自分の名前を言うんじゃないのか。


「綴は、幾つなの?」

「16歳だけど」

「好きな人はいるの?」

「いやいないけど、」