過つは彼の性、許すは我の心 壱


「それはもう何でもよ」

「何でも?」

「そうね、洋直が出来る範囲ならなんでもよ」

「へえ…」


 ああ、始まった、始まってしまった。


「待てよ、妃帥っ」

「烈、黙りなさい」


 ピシャリと妃帥は烈に言い放つ。

 彼女のこういう時に放つ存在感は、獅帥と何ら変わらない。

 あんなに横柄な態度だった烈も言葉を飲み混ざる得なかった。


「あ、あの…」


 幼馴染の萎縮した態度に、何かに気付いたのか怯え始める洋直。

 
「岸谷洋直」

「はい!」


 獅帥は眼鏡を取って、作業をしていたマホガニーの机に置く。

 この部屋にいる全員が獅帥の言動を固唾を呑んで見守る。

 コツ、コツ、コツと靴音が室内にやけに響き、机の前にいた洋直の傍まで辿りつく。

 獅帥を見上げた顔には、先程見えた恐怖は見えない、寧ろ恍惚とした表情が見て取れる。

 日の光に照らされた獅帥を直視すれば、ああもなるもの。


「あっ…」


 獅帥の長く白い指先が触れて、洋直の顎を上げる。

 ゆったりと、でもハッキリとした口調で獅帥は言葉を紡ぐ。

 周囲にいる人間達は託宣を聞くが如く獅帥の言葉を待った。


「お前はこれからフレアのモノだ」

「…」

「俺達がお前に何をしようとも、何をされようとも受け入れろ」

「…」

「分かったな」

「…はい」