「それはもう何でもよ」
「何でも?」
「そうね、洋直が出来る範囲ならなんでもよ」
「へえ…」
ああ、始まった、始まってしまった。
「待てよ、妃帥っ」
「烈、黙りなさい」
ピシャリと妃帥は烈に言い放つ。
彼女のこういう時に放つ存在感は、獅帥と何ら変わらない。
あんなに横柄な態度だった烈も言葉を飲み混ざる得なかった。
「あ、あの…」
幼馴染の萎縮した態度に、何かに気付いたのか怯え始める洋直。
「岸谷洋直」
「はい!」
獅帥は眼鏡を取って、作業をしていたマホガニーの机に置く。
この部屋にいる全員が獅帥の言動を固唾を呑んで見守る。
コツ、コツ、コツと靴音が室内にやけに響き、机の前にいた洋直の傍まで辿りつく。
獅帥を見上げた顔には、先程見えた恐怖は見えない、寧ろ恍惚とした表情が見て取れる。
日の光に照らされた獅帥を直視すれば、ああもなるもの。
「あっ…」
獅帥の長く白い指先が触れて、洋直の顎を上げる。
ゆったりと、でもハッキリとした口調で獅帥は言葉を紡ぐ。
周囲にいる人間達は託宣を聞くが如く獅帥の言葉を待った。
「お前はこれからフレアのモノだ」
「…」
「俺達がお前に何をしようとも、何をされようとも受け入れろ」
「…」
「分かったな」
「…はい」



