過つは彼の性、許すは我の心 壱


 慇懃無礼な態度を一切崩さないカズミは、


「烈様。どうか離れてください」

「アア!?」


 火に油を注ぐようなことを烈に言った。

 子供も裸足で逃げ出すような顔をしているのだろうが、カズミの声色には恐怖も緊張も無い。

 これは早めに止めないと、部屋の高価な品々が破壊される。

 私と同じ様な気持ちの者達が顔を見合わせて、止めようと動く。


 その時、


「妃帥お嬢様はご存知の通りですが、岸谷洋直きしやひろな様はこれより獅帥様のモノです」

「なっ…」

「この意味貴方ならお分かりでしょう」


 言葉を詰まらせる烈に追い打ちがかかる。


「そうよ、それに本人が快く引き受けてくれたのよ?」


 妃帥はキシヤヒロナ…洋直の手に取り、獅帥の前に連れ出す。


「お兄様、洋直と知り合いだったんでしょう?」

「…ああ」


 獅帥は覚えがあったみたいで、妃帥の言葉に頷く。


「洋直どうやってお兄様と会ったんだっけ?」

「えと、あの烈のお屋敷でそのバイトしてて…」


 洋直の話では、洋直はどうやら貧乏学生で、親同士が古くからの知り合いである烈の両親の好意で、同じ屋敷に住まわせてもらっていた上に、烈の住むお屋敷にメイドとして、中学生ながら働かせてもらっていたとか。

 学業と仕事を両立しながらのある日、烈の周囲にいる取り巻き連中が遊びに来て、意地悪をされていたところに、偶々烈に用事があった獅帥が通りがかった。