過つは彼の性、許すは我の心 壱

 頭の中で幾度となく思い出された光景が、夕暮れが、ネオンが、血が。

 見た目だって全然違うのに現れた彼女が何故だがダブって見えて、動きが止まる。


「返して!」


 ふんだくる様に私の手からビーズを奪い取られて、意識が現実に戻った。

 私幻覚見過ぎだわ、反省。


「あ、ごめんね」


 取り敢えず謝ってみたが、顔覆うほどの長い髪の少女はふーふーと警戒心を露わにしていてとりつく島もない。

 その瞬間、ぶわりと。


「あっ…!」


 窓から強い風が吹き込んで、警戒心の強い彼女の艶めいた黒髪を揺らす。

 桜の花びらが室内に舞い、ふと見えた髪の隙間。

 覗く切れ長の薄い色素の瞳…火傷?

 そう思ったのも束の間。


「やっ…!」


 私の視線に気付いた彼女は、小さな悲鳴を上げてぱっと髪で顔を覆った。

 よくよく見たら着ているものが制服じゃない。

 毒々しい赤地に黄金色が渦の様に這う着物は、明らかにお高いもの。少なくてもうちの学生ではなさそう。


 もしかして迷子?


「あの…」

「…ごほっ」


 出鼻を挫かれた感じだが、急にごほごほと咳をし始めたので慌てて近づいた。

 
「大丈夫?」

「っ…!」


 背中にそっと触れると一瞬びくりと身体を震わせたが、拒否はされないのでそのまま撫で続ける。

 
「…」

「落ち着いた?」


 咳が落ち着いて来たのを確認して、私は彼女の前に背中を向けながら跪いた。