過つは彼の性、許すは我の心 壱


 というか、不運な子だと思っていた。

 2年目の始めに起きた事件に巻き込まれた被害者。

 この学園の事情や特に天條家について知らないせいで、トラブルに巻き込まれた一般人。

 いや、天條家のことは知らなかったことは逆に幸運だったのか。


 唐堂綴。

 私のクラスメイトであり、つい先程友人になった子。

 肩に届く程度の黒髪を毛先だけふんわりと軽く巻き、化粧や制服の着崩しも校則に違反しない程度に押さえている。

 顔は整っているとは言えるけれど、抜きん出て美しいとか、可愛いとかでもなく、派手でも地味すぎもしない。

 頭も特別いいわけでもないし、身体能力に優れているとかそう言うわけでもない。

 のほほん、ふわふわ、ぼんやり。

 そういう言葉が似合いそうな本当に至って普通の子。

 
『妃帥ちゃんの大きな器で、未熟で小さな私を受け止めてほしいなあって』


 思っていたんだけど…。

 きっとあの場にいた獅帥以外は内心ヒヤッとしてた筈。

 幾ら彼女が“不良品”と呼ばれているからと言って、彼女の機嫌は獅帥の機嫌でもある。

 彼女の不況を買って実際に何人の人間達が堕ちていったことか。

 私達が窘めるのが許されているのは顔馴染みであるからで、それでもかなり慎重に諫言している。(烈の場合はまた別だけど)