獅帥もよく笑って、よく話していた。
でも、
『何とか言ったらどうなのよ獅帥!』
『…』
変わってしまった。
全て変わってしまった。
お互いに起きていることを知らなかった。
何も言わない獅帥に苛立った。
後からそれが間違っていることに気付いたけど、何もかも手遅れになっていた。
獅帥は話す言葉が極端に減って、笑わなくなった。
淡々と言われたことを熟し、求められるモノに近づいていく。
日に日に成長していく獅帥を崇め奉る。
大事にされている。
全てに置いて優遇されている。
誰からも愛されている。
だって獅帥は“天條獅帥”だから。
くだらない、本当にくだらないわ。
「妃帥」
獅帥の呼びかけに意識が現実に引き戻される。
「どうしたの、お兄様」
「“あっち”はどうする」
“あっち”と言えば、
「…そうね、もういいかしら」
いやでもわかったでしょう、自分の立場が。
私はクスリと笑って、
「お兄様は?」
分かりきったことを獅帥に訊けば、
「…どうでもいい」
想像通りの答えに笑い声を上げた。



