過つは彼の性、許すは我の心 壱


 獅帥もよく笑って、よく話していた。


 でも、


『何とか言ったらどうなのよ獅帥!』

『…』


 変わってしまった。

 全て変わってしまった。

 お互いに起きていることを知らなかった。

 何も言わない獅帥に苛立った。

 後からそれが間違っていることに気付いたけど、何もかも手遅れになっていた。

 獅帥は話す言葉が極端に減って、笑わなくなった。

 淡々と言われたことを熟し、求められるモノに近づいていく。

 日に日に成長していく獅帥を崇め奉る。


 大事にされている。

 全てに置いて優遇されている。

 誰からも愛されている。


 だって獅帥は“天條獅帥”だから。


 くだらない、本当にくだらないわ。



「妃帥」


 獅帥の呼びかけに意識が現実に引き戻される。


「どうしたの、お兄様」

「“あっち”はどうする」


 “あっち”と言えば、


「…そうね、もういいかしら」


 いやでもわかったでしょう、自分の立場が。

 私はクスリと笑って、


「お兄様は?」


 分かりきったことを獅帥に訊けば、


「…どうでもいい」


 想像通りの答えに笑い声を上げた。