過つは彼の性、許すは我の心 壱


 思い出すと苛立ちが消えて、笑みが溢れる。

 思わず調子を合わせてしまうほど、気持ちが弾んでしまっていた。

 
「何んでかしらね、私にも分からないわ」

「…」


 獅帥の顔は見えないが不可解だという顔をしているんだろう。

 平凡そのものの癖して、


『恋愛って結局は恋愛している2人の問題で、それ以外は部外者だと思うし、2人の間で話しが済んでいれば私が口を出すこともないよ』

『いや生徒会員としてじゃなくって。暇な時とか、どうでもいいことを誰かに話したい時、なんでもいいよ』

 
 妙に聡い時もある。

 そして、


『私何にもしなかったし、何も出来なかった』

『勝手に病んで家族に面倒かけて、逃げ出してここに来た』

『もう、それだけ』


 私達と 似た(・・)何かを持ったあの子。

 良いことに繋がるか、悪いことに繋がるか、これからわかる筈。


ーーーこれが最後の賭けになるかもしれない。


 そんな私の思いを見透かすように、獅帥が私をぎゅっと抱きしめる。

 痛いぐらいに。

 ぎゅっと抱き締め返す。

 獅帥に比べたらその力は余りにも弱々しい。

 小さな頃は差なんてなかったのに、いつから差がついたのかしら。


『大丈夫。私が獅帥を守るから』

『大丈夫。俺が妃帥を守るから』


 そう言っていたのは、遠い過去。

 あの頃は自分達の世界に籠ることを許されていた。