思い出すと苛立ちが消えて、笑みが溢れる。
思わず調子を合わせてしまうほど、気持ちが弾んでしまっていた。
「何んでかしらね、私にも分からないわ」
「…」
獅帥の顔は見えないが不可解だという顔をしているんだろう。
平凡そのものの癖して、
『恋愛って結局は恋愛している2人の問題で、それ以外は部外者だと思うし、2人の間で話しが済んでいれば私が口を出すこともないよ』
『いや生徒会員としてじゃなくって。暇な時とか、どうでもいいことを誰かに話したい時、なんでもいいよ』
妙に聡い時もある。
そして、
『私何にもしなかったし、何も出来なかった』
『勝手に病んで家族に面倒かけて、逃げ出してここに来た』
『もう、それだけ』
私達と 似た何かを持ったあの子。
良いことに繋がるか、悪いことに繋がるか、これからわかる筈。
ーーーこれが最後の賭けになるかもしれない。
そんな私の思いを見透かすように、獅帥が私をぎゅっと抱きしめる。
痛いぐらいに。
ぎゅっと抱き締め返す。
獅帥に比べたらその力は余りにも弱々しい。
小さな頃は差なんてなかったのに、いつから差がついたのかしら。
『大丈夫。私が獅帥を守るから』
『大丈夫。俺が妃帥を守るから』
そう言っていたのは、遠い過去。
あの頃は自分達の世界に籠ることを許されていた。



