過つは彼の性、許すは我の心 壱


「お兄様」

「…何だ」

「綴に迷惑かけないで」

「…」

「それに、綴は私の ミケ(・・)よ」

「…」

「丁重に扱ってね、皆んなも」


 それにちょくちょく出るミケ、とか謎の隠語が出る度に2人の、周囲の空気が緊張しているのも。


「妃帥」

「何かしら」

「本当に、本気なんだな」

「ええ、言ったじゃない」

「…」


 2人の間で話されている、2人にしか分からない言葉の応酬も。気になることが多すぎる。


「…綴、また後で連絡するわね」

「へ?」

「お兄様と 色々(・・)話をしなきゃ行けないみたいだから、今日はお兄様と帰るわ」

「え、あうん」


 するりと私の腕から妃帥ちゃんが抜けて、天條君に近づいて腕を伸ばすと、彼は慣れたように妃帥ちゃんを抱き上げる。

 周りから感嘆の溜息が聞こえないのが不思議なくらいの2人。

 同じブレザーの制服を着ているのにブランド品に見せてしまう一級品の容姿を持った天條君と、同じく白皙の美貌を持った血のように濃く赤い着物を着た妃帥ちゃん。

 額縁に納めたくなるほどの一枚絵。

 ここにはきっとこの学園でも指折りの美男美女がいるのに、やっぱり2人は別格だ。

 それに2人と私達以外で、明確な境界があって皆んながそれを当たり前だと思っている。