過つは彼の性、許すは我の心 壱


 人が死ぬだなんてショックな光景を見たら、誰でも…。

 伺う様に隣を見れば、知らぬ間に俯いている妃帥ちゃん。

 具合悪い?と声を掛けようとしてーーー途端私の腕をギュッと握る。


「妃帥ちゃん…」


 身体の力を抜いて、寄りかかる様にしがみついてくる妃帥ちゃん。


「妃帥ちゃん大丈、」


 ぶ?その一音が出なかった。

 慌てて抱えた腕の中の妃帥ちゃんが、


「ふ、ふふっ…!」


 と噛み殺す様に笑っていたから。

 予想していなかった言動に、ビクリと身体が揺れた。

 傍から見れば恐ろしい光景に震えている様に見えただろうが、そうではなく、妃帥ちゃんは、少女は、正しく歓喜していて、喜びを周囲に悟らせまいとしているだけだった。


「ふ、ははっ…!」


 声が漏れない様に私の胸に抱き着く少女を、ただ呆然と見つめる。

 確かに長年自分をよく思っていなかった相手が死んだ事は、嬉しい範囲に入るのかもしれない。(倫理的な問題や人としてどうなんだろうと言う事は置いておくとして)

 
 ただそれにしても、その微笑む姿は。


「…や、と」

「っ」


 見上げた少女の神に愛された顔貌は、狂気に満ちた微笑みを私に見せる。

 まるでヨカナーンの首を差し出されたサロメの様に、凄艶で、悍ましい程の美しさに、脳髄が痺れる様な感覚に襲われた。