過つは彼の性、許すは我の心 壱


 入って来た人物が私達を見て止まり「申し訳ありませんでした。出直します」と出て行こうとする。


「さっき言っていたお医者さん?」

「待ってくれ、入って大丈夫だ」


 獅帥君はグイグイ眉間を触っていた私の手を取り、入って来た人物の入室を促す。


「取り込み中では…」

「取り込み中ではない。診てくれ」


 そう言って現れた人は出席者だった様で、恐らく30代前半辺りの、タキシードを着た男の人だった。

 男の人は私の目の前に来て、片膝を突く姿勢になる。


「自覚症状は今何かありますか?」

「…えと、眩暈と気持ち悪さ、後は頭の痛さと…あ、でも気持ち悪さと眩暈は大分良くなりました」

「そうですか。頭をぶつけたとかでは無いんですね」

「はい。元から時々頭痛くなることがあって」

「頭痛持ちですか?」

「はい。考え込んだりとか、昔の事を思い出したりとかした時によく…」

「そうですか。獅帥様、彼女に触っても?」


 獅帥君は頷いて私から手を離すと、立ち上がって一歩下がる。

 男の人は「触りますね」と言って、私の手首を1分程度触り、他何点か私に問診すると「鎮痛薬は常用しているものはありますか?」と聞いて来る。


「それが持って来たか覚えていなくって」

「本当だったらよく使用しているものが1番いいんですけど、天條家に常備しているものがあるので其方を…」