殴ったんだし、殴られても仕方ないか。
歪む意識の中でそう思った瞬間、
「ーーーそこまでだ」
誰かの手が女の手首を掴む。あれデジャヴ。
見上げたら、
「…獅帥君」
獅帥君が女の手を掴んでいた。
自然に考えたら獅帥君がいるのは不思議じゃないんだけれど、神がかりタイミング…いや神様何だっけこの家の常識なら。
「さっきより顔色が酷い」
「獅帥君…」
自然と女を押しのけて、ふらつく私の身体を支えた獅帥君は「…医者に見せよう。天條にはかかりつけの医師がいる」と言った。
「し、獅帥様!」
「少し歩けるか?」
「う、うん大丈夫だと思うけど…」
後ろにいる女はいんですかね?と思うぐらいのスルーっぷりにこっちが気になってしまった。
「見てくださいこの頬!人の頬を平気で叩く様な野蛮な女、妃帥様のミケとして相応しくな、」
「綴」
遮る様に名前を呼ばれてえ?と言う間もなく、私の身体を支えながら獅帥君が女を振り返った。
「し、獅帥さ、」
「綴の知り合いか?」
「え」
すっとんきょな事を言う獅帥君を思わず見上げて、息を呑む。
………何かピリピリしている?
無表情は無表情なんだけれど、その横顔に何処か冷たい怒気を感じて、少しだけ身が竦むが、
「…獅帥君の知り合いじゃないの?」
何ならそう言う関係じゃないの?と思っていれば、獅帥君は「いや知らない」と言い切る。



