過つは彼の性、許すは我の心 壱


 殴ったんだし、殴られても仕方ないか。

 歪む意識の中でそう思った瞬間、


「ーーーそこまでだ」

 
 誰かの手が女の手首を掴む。あれデジャヴ。

 見上げたら、


「…獅帥君」


 獅帥君が女の手を掴んでいた。

 自然に考えたら獅帥君がいるのは不思議じゃないんだけれど、神がかりタイミング…いや神様何だっけこの家の常識なら。


「さっきより顔色が酷い」

「獅帥君…」


 自然と女を押しのけて、ふらつく私の身体を支えた獅帥君は「…医者に見せよう。天條にはかかりつけの医師がいる」と言った。


「し、獅帥様!」

「少し歩けるか?」

「う、うん大丈夫だと思うけど…」

 
 後ろにいる女はいんですかね?と思うぐらいのスルーっぷりにこっちが気になってしまった。


「見てくださいこの頬!人の頬を平気で叩く様な野蛮な女、妃帥様のミケとして相応しくな、」

「綴」


 遮る様に名前を呼ばれてえ?と言う間もなく、私の身体を支えながら獅帥君が女を振り返った。


「し、獅帥さ、」

「綴の知り合いか?」

「え」

 
 すっとんきょな事を言う獅帥君を思わず見上げて、息を呑む。


………何かピリピリしている?


 無表情は無表情なんだけれど、その横顔に何処か冷たい怒気を感じて、少しだけ身が竦むが、


「…獅帥君の知り合いじゃないの?」


 何ならそう言う関係じゃないの?と思っていれば、獅帥君は「いや知らない」と言い切る。