ーーーパンッ!と良い音が室内に響く。
女は叩かれた衝撃によろめき、頬を抑えながら立ち尽くす。
逃すもんか。
グッと着物の合わせを掴んでやり、大声で叫んでやった。
「アンタこそ理解力もなければ口も悪い。普通妹を貶されて喜ぶ兄が何処にいる!」
「獅帥様が、オオミカが、普通の人の様に考える事なんて、」
「獅帥君にも感情がある!アンタらがそうやって自分達の考えを、獅帥君に押し付けるから言わないだけで、妃帥ちゃんを大事に思っているわ!」
もし彼女等の言う様な獅帥君なら、妹の為にクッキーを焼いたり、危険から妹を守ろうなんてするもんか。
「オオミカは誰にでも優しく、」
「だから、オオミカじゃないって言っているでしょうが!獅帥君が優しいのは獅帥君だからで、オオミカだからじゃない!」
ーーー言ってて、妃帥ちゃんはこう言うのが嫌なのかもしれないとも思った。
獅帥君をオオミカとしか見ない人達、それを抵抗なく受け入れてしまう獅帥君。
この家に蔓延る因習を嫌っているんだ。
妃帥ちゃん達の抱える闇の一端に、覗かれている気がした。
駄目だ頭がクラクラする…。
単純に具合が悪い事を忘れていた私は、ぐらりとその場で蹈鞴を踏む。
「貴方なんかに、」
女も漸く自分がされた事を思い出したかの様に、ぎろりと私を睨みつけ、手を伸ばしてくる。



