過つは彼の性、許すは我の心 壱



ーーーパンッ!と良い音が室内に響く。


 女は叩かれた衝撃によろめき、頬を抑えながら立ち尽くす。

 逃すもんか。

 グッと着物の合わせを掴んでやり、大声で叫んでやった。


「アンタこそ理解力もなければ口も悪い。普通妹を貶されて喜ぶ兄が何処にいる!」

「獅帥様が、オオミカが、普通の人の様に考える事なんて、」

「獅帥君にも感情がある!アンタらがそうやって自分達の考えを、獅帥君に押し付けるから言わないだけで、妃帥ちゃんを大事に思っているわ!」


 もし彼女等の言う様な獅帥君なら、妹の為にクッキーを焼いたり、危険から妹を守ろうなんてするもんか。


「オオミカは誰にでも優しく、」

「だから、オオミカじゃないって言っているでしょうが!獅帥君が優しいのは獅帥君だからで、オオミカだからじゃない!」


ーーー言ってて、妃帥ちゃんはこう言うのが嫌なのかもしれないとも思った。

 獅帥君をオオミカとしか見ない人達、それを抵抗なく受け入れてしまう獅帥君。

 この家に蔓延る因習(・・)を嫌っているんだ。

 妃帥ちゃん達の抱える闇の一端に、覗か()ている気がした。

 駄目だ頭がクラクラする…。

 単純に具合が悪い事を忘れていた私は、ぐらりとその場で蹈鞴を踏む。


「貴方なんかに、」


 女も漸く自分がされた事を思い出したかの様に、ぎろりと私を睨みつけ、手を伸ばしてくる。