彼は彼女が戻るまで何度でもここに来るのだろう。
そして、そんな彼の家族も彼を心配し、彼の友人も、私も、心配し続けるだろう。
『じゃあ…いてよ』
迷いを察したかの様に彼女が何かしらを呟いた為に『何?』と聞き返す。
意を決した様に私を見つめて、
『なら、傍にいてよ』
『え?』
『…綴が暫く付き合ってくれたら、戻ってあげる』
跡が残るぐらい握り締めながらそう、取引を持ち掛けた。
そこまで彼女が自分を引き止める理由が分からなかったし、暫くがいつまでか分からなかった。
でも、傍に少しの間いるだけならとも思ってしまった。
何より彼女が今私を見つめる目が、大好きだった頃の彼女を彷彿とさせ、
『…分かった』
気付いたら了承してしまった。
その決断が一生の心の傷になるとは思わずに。
そこからそのクラブにいる様になって、早々にそのクラブにいる人達の所業に嫌になっていた時に出会ったのが、キエイと呼ばれる男だった。
彼が私を選んだのも偶々。
私が彼に選ばれてしまったのも偶々。
あっちからすれば、普通過ぎる私が物珍しかった。
恐らくそれだけだった、はず。
「駄目だ…頭痛い」
頭の痛さに額を押さえる。
状況整理の為にって無理矢理思い出したけれど…。
「思い出さなければ良かった…」
ガンガン来る痛みに顔を顰める。
頭痛薬なんて持って来ていたっけ。



