過つは彼の性、許すは我の心 壱



「りんご」


 獅帥君の口からりんごって出ると…可愛いな、何か。


「…林檎好きなの?」

「好きって言うより、思い出す」

「思い出す?」


 こくんと頷く獅帥君。


「安心する」

「林檎を見ると?」

「うん」


 いまいち好きになった理由は分からないけれど、今の獅帥君が絞り出した好きなモノなのか。


「…いいね、林檎。この調子でどんどん作って行こう!」

「複数作るのか?」

「いいじゃん複数作ろうよ。だってまだ林檎しか好きじゃないんでしょう?ワクワクじゃん」

「ワクワク…」


 そう考えると、真っさらな状態の獅帥君って、あの初めて好きなモノを得られた快感を知らないって事だもんね。本当にワクワク半端ないじゃん。


「出来たら私と好きなモノトークしよ。どうせ私しか知らないんだからさ。あ、だったら今から妃帥ちゃんトークでもする?」


 獅帥君も大好きでしょう妃帥ちゃん。


 そう興奮気味に伝えれば、獅帥君の時が一瞬止まる。

 え、どうしたの?と獅帥君を見ていれば「…お前の理屈で言えば、好きなモノは安心できるモノだよな」と私に問い掛けてくる。


「うんまあ…安心したり、テンション上がったりすると言いますか…」


 何故だか敬語になりつつそう話せば、獅帥君は柳眉を寄せて「俺は妃帥を見ると、不安になる」と私まで不安になる様な事を言い始めた。


「不安?」