過つは彼の性、許すは我の心 壱


 ふわりと後ろから抱き締められた。

 甘くていい匂い。

 甘ったるくも、どろりとしたその声に腰砕けそうになった。

 ワイルドイケメン君の瞳が見開く。

 なにシンカンとか、ミケとか、ミケってネコ?

 パッと他の人の顔を見れば皆が皆驚いたような顔をしている。

 何なんなの?


「綴」

「え」


 くるりと後ろを振り向かせられる、私の両手を握り締める着物の少女。

 小悪魔的な雰囲気と異なる妙な空気に、動きが止まる。


「私が、綴のオオミカ・・・・になる」

「へ?」


 美しく微笑む姿は先程の頬擦りしたくなるようなものではない。

 陰鬱で、儚くて。


「なって、あげるの。だって、綴助けて・・・欲しいんでしょ」

「っ」


ーーー邪悪なものに見えて、一歩後ずさりたくなる。


『綴はもっとグイグイ行かなきゃ』

『綴って可愛いわね』

『ふははは!綴…可哀想、本当に』


 心をぐちゃぐちゃにしたあの子がダブる。


『ねえどうして、どうして!』

「大丈夫、私がなってあげる」


 瞳は狂気に染まって、


「うん、て頷くだけでいいの」


 血の怨嗟を吐き出す。


 恋人同士の様に私を抱きしめて、耳元に口を寄せる。


 そして、


『私はいつまでアンタの、』
「神様に」


 甘言を囁いた。


 それに、


「…っ」


ーーー堪らなくなった。



 華奢な彼女の肩を掴み、バッと私から離す。


「綴どうし、」

「ならなくていい、いいんだよ」


 彼女の言葉を遮った。

 あの時言えなかったから、言わなきゃ彼女に。


 あの子に。