過つは彼の性、許すは我の心 壱



 もしかして無表情ながらお腹は空いているけれど、緊張しているから食事が喉を通らない可能性もあるか。


「何か好きな物とかはないの?もしあるなら私取りに行くよ」


 だから軽く聞いてみたけれど、今まで打てば響く様に答えた獅帥君の返事は、


「…いや」


 その一言だった。

 おや?とも思ったが「嫌いな物は?」と聞いてみた。

 でも、


「…いや」


 と答える獅帥君。


 何だろう実はゲテモノ好きで、恥ずかしくって言えない!って事?


「大丈夫ドン引きしないから教えてよ」


 世には色んな趣味嗜好があるんだから、好きなだけ言えばいいのに。

 そんな思いで獅帥君に伝えれば、柳眉を僅かに顰めて。


「…ない」

「へ?」

「食べ物を美味しいと感じた事がない」


 そう、獅帥君は言った。


 …。


「味が分からないとか?」

「味は分かる」

「亜鉛摂ってる?」

「…味は分かる」

「そっか」


 亜鉛不足じゃないのか。

 
「…食べた時にううん〜ま〜ってなる事無かったの?」

「ううんま?」


 ああ私感覚で話しちゃった。


「幸せ〜最高〜マジヤヴァイィ〜とか」


 ギャルっぽくなっちゃったよ、でも(無理矢理にでも)気持ちは伝わるか。

 どう伝わった?と獅帥君を見れば、


「珍獣を見る様な目で見んでも」

「…」


 はあ?何言ってんだお前、って言う目が痛い。