過つは彼の性、許すは我の心 壱



「赤うもなるわ」


 仄暗い廊下でも凌久君の形の良い耳が、ほんのりと赤く染まっているのが分かる。


「ほんまに勘弁しなはれ…」


 凌久君は恥ずかしさから口を手で覆いながら、そう呟いた。


「凌久君って女の子慣れしているから、私如きがこんな事しても恥ずかしがるなんて思わなかった」


 珍しくてまじまじと眺めてしまう私を、呆れた様に見下ろしながら「あんな…」と言う凌久君。

 ふと思い付いた様に凌久君が、自分の顔を私に近づけてくる。


「ちょ」


 顔をぐいっと背けようとするが、頭をグッと押さえられる。

 心臓がドクドクと高鳴る。

 凌久君の秀麗な美貌が私の口元に近づいたと思ったら、するりと耳元の方に近付く。

 またいやらしい事を言う気か!と構えると、そんな私を見てクスリと笑った凌久君は耳朶にちゅっと。


 ちゅ。

 ちゅ…?

 ちゅ…!?


 パクパクと口を開いて凌久君を見ると、ニヤリと口角を上げている。

 そして、
 

「可愛いって思てる女に抱き付かれたら誰でもこうなる」


 してやったり顔で意地悪く笑う凌久君に、もう降参。

 冷え切った身体は一瞬にして熱くなり、私の顔は凌久君の赤くなった顔より赤く熟している。絶対。


「可愛いなあ」

「もうっ!揶揄うの禁止!」


 余裕綽々ムカつく…!