『ふふ…はは…ねえ綴?私の事が大好きなんでしょう?なら、出来るわよね』
久々に頭に声が響く。
ぼわんぼわん頭の中で、響いては反響する。
『これで綴も私と一緒。もう戻れないわ』
大輪の笑顔を咲かせたあの子の笑顔が、クレヨンの黒色でグチャグチャにされて見えない。
「アイツら…妃帥達は痛うも痒うもあらへんけど、つづには、つづ?」
これでいいんだ、これが普通なんだ。
あの子がいる場所が私に取ってのしあわ、
「つづ!」
「っ…どうし、たの凌久君」
そう言い掛けたら、カーディガンを引っ張られてポスンと抱き留められる。
匂いが鼻腔を擽る。
シトラスムスクの匂い。
爽やかさと甘さが香る良い匂い。
この匂いは凌久君のだ。
あの場所じゃない、あの子はもういない。
「悪いなあ…つづ脅したいわけやなかったのに」
「…ううん、凌久君は悪くない。私こそごめん」
ギュッと凌久君を抱きつくと、凌久君が私を抱き締め返してくる。
違う、違う、違う。
消し去る様にすりすりと凌久君の胸に頬擦りする。
「つ、つづ?」
「ちょっとだけこうしてて」
頭上で凌久君の戸惑う声が聞こえるが、今だけ待ってて欲しい。
スーハーと思いっきり香りを楽しんだ後(変態なのは置いておくとして)、凌久君の顔を見上げれば、
「凌久君…顔赤い?」



