過つは彼の性、許すは我の心 壱




『ふふ…はは…ねえ綴?私の事が大好きなんでしょう?なら、出来るわよね』


 久々に頭に声が響く。


 ぼわんぼわん頭の中で、響いては反響する。


『これで綴も私と一緒。もう戻れないわ』


 大輪の笑顔を咲かせたあの子の笑顔が、クレヨンの黒色でグチャグチャにされて見えない。


「アイツら…妃帥達は痛うも痒うもあらへんけど、つづには、つづ?」


 これでいいんだ、これが普通なんだ。

 あの子がいる場所が私に取ってのしあわ、


「つづ!」

「っ…どうし、たの凌久君」


 そう言い掛けたら、カーディガンを引っ張られてポスンと抱き留められる。

 匂いが鼻腔を擽る。

 シトラスムスクの匂い。

 爽やかさと甘さが香る良い匂い。

 この匂いは凌久君のだ。

 あの場所じゃない、あの子はもういない。


「悪いなあ…つづ脅したいわけやなかったのに」

「…ううん、凌久君は悪くない。私こそごめん」


 ギュッと凌久君を抱きつくと、凌久君が私を抱き締め返してくる。

 違う、違う、違う。

 消し去る様にすりすりと凌久君の胸に頬擦りする。


「つ、つづ?」

「ちょっとだけこうしてて」


 頭上で凌久君の戸惑う声が聞こえるが、今だけ待ってて欲しい。

 スーハーと思いっきり香りを楽しんだ後(変態なのは置いておくとして)、凌久君の顔を見上げれば、


「凌久君…顔赤い?」