冗談では無いのは彼の態度から分かる。
怖くて一歩後退りしそうになるが、何で彼が、凌久君がわざわざ怖がらせる様な言い方をしたのかを考えた。
きっと理由があるんだ。
だから私の答えは、
「…どうして?」
聞くべきなんだ。
正解かは分からなかったけれど、凌久君は少しだけ哀切を滲ませて微笑む。
「殺されたって言うより、恐らくそうなったかなって」
「そうなったって…」
そんなあやふやでいいものじゃないでしょうに。
でも凌久君自身も知りようがないから、曖昧な言い方をしているのかもしれない。
凌久君は言葉に感情を一切乗せずに事実を述べていく。
「色々あって俺が病院から帰って来た日。母親がいーひんなって思たら、誰に聞いても知らへんって言われた。初めは意味分からへんかったけど、暫くして母親使うとった物から服まで全部無うなっとったのに気付いた」
「…」
「ーーー母親の存在はなかった事にされたって事やな」
膨大な凌久君の事情は、衝撃過ぎて理解が追いつかない。
「ほんなら俺まで殆どいーひん様な扱いになってな。ああ、もしかしたらわしも母親みたいにされるんかいなって思た」
どんな気持ちで日々を過ごしていたんだろう。
例える事も、想像する事も、その辛さは計り知れないもので。



