でも…逆を言えばそんなおじいちゃんをそれ程怒らせたって事になるんだよね。
一体匡獅さんは何をしたの?
「実は知り合いって言うのも、紹介された形でな」
「紹介って?」
妃帥ちゃんの言葉に、匡獅さんが一拍間を置く。
言葉を躊躇う、いや誰にも見せたくない宝物を、渋々見せようとする様に、その名前をそっと、紡いだ。
「ーーー八重の」
その名前がまるで時を止めるキーワードだったかの様に場が静まる。
え、何?と思った瞬間ーーーカランと。
「すまん、落とした」
床に何かが落ちる音が響くと共に、場が動き出した。
持っていたナイフを落とした凌久君は、近くにいた使用人に新しい物に変えてもらっていた。
動揺する凌久君を訝しげに思いながら、チラリと天條兄妹の様子を伺う。
2人は、動揺していると言うよりは…悲しんでいる?
ただ理由を聞くのも憚られる空気感で。
「…」
「…」
先程の楽しげな雰囲気は嘘だったかの様に、暗い沈黙がその場を支配する。
食堂には食器の音や料理の説明をする執事さんの声しか響かなくなった。きっと美味しい料理で、説明を聞く事でより美味しさが際立つ筈なのに、全く楽しめない。
これは、
「その方と…祖父母達はどうして仲が良かったか聞いた事ありますか?」
勇者になるしかない。



