海外のお金持ちの家でしか見ない光景である、敷地内で車を乗り回す何ともレアな体験をした。
別館に来る前は、あの天女目ズとの遭遇と四葉さんの急な転換に、精神的にグッタリしていたのもあり、素晴らしい景観を楽しみながら歩けたのは、心が浄化される心地だったけれど…。
「でもそんなに時間掛からずに来れたよね」
「多分近道使うたんやろう」
「あーなるほど」
私達の通う学園も広大な敷地を有しているので、敷地内にミニバスみたいのがあるけれど、学校レベルの事を家でやれるなんて…天條邸恐るべし。
「私迷子にならないかな」
「大丈夫よ私もお兄様もいるから」
「俺もさっきの道覚えたさかい、つづが迷子になっても迎えに行ける」
「マジかよ凌久君」
ふわふわとした会話をしながら、先ほど歩いた道を皆んなと歩んでいると、一際大きな両扉の前でカズミさんが止まった。
「着きました」
カズミさんの言葉と共に両扉が開く。
いよいよ、妃帥ちゃん達のご両親に会える。
ドキドキと胸を高鳴らせながら、獅帥君と共に室内に足を踏み入れる。
その直前、視界の端に。
あれって…。
廊下の角辺りに一瞬、鳥兜の柄の青い着物の裾が見えた気がした。
…いてもおかしくないか。
「綴」
「ん、ごめん獅帥君」
忘れる様にかぶりを振って、獅帥君と共に室内に入った。



