妃帥ちゃんから見れば私なんて尻尾を振る犬ぐらいにしか見えていないのだろうな、実際にそうだし。
普通それに気付いた時点で、本来なら怒ったり、疑心が強くなっても仕方ないのかもしれない。
それでも、
「…分かった。ちゃんと後でお返しさせてね」
今は妃帥ちゃん馬鹿な自分で居続けよう。
それが最善なんだ、今は。
「もう気にしなくていいのに」
「気になっちゃうよ庶民だもん」
いひひと笑うと「こら変な笑い方しない」と嗜められる。
あ、そうだ。
「そういえば妃帥ちゃんはお着替えしなくて大丈夫なの?」
そうそう、私の大変身はさておき。
まあ妃帥ちゃんからすれば、お父さんと食事するだけだろうけど、私を変身させるぐらいなら妃帥ちゃんも一応は着替えた方が良いのかと思ったわけで…。
私の問い掛けに妃帥ちゃんは、濃淡の赤い着物を揺らして、
「大丈夫よ。これは訪問着だから夕食会に着て行ってもマナーには反してないのよ」
「訪問着?」
着物がよく見える様にくるりと回った。
毒々しい赤地に黄金色が渦の様に這う様に見えていたが、よく見ると黄金の河に桜が混じっていて、そう、まるで1枚の絵の様に見える。
広げたら本当に絵画みたいに見えそう。
「絵羽模様って言うのよ」
「へえ…」



