過つは彼の性、許すは我の心 壱

 

「お金の事なんて」


 ノウノウと人差し指を振って聞くなと封殺される。やっぱりそうじゃないか。

 庶民の自分としては気が気で無い訳で「で、でも」と言い募ろうとするが、


「綴」


 ピトリと私のグロスを塗られた唇に、白く透明感のある指先が触れる。


「綴は私の家絡みで何度か危険な目にあっているのよ?慰謝料にしても安いぐらいよ」


「それは…」


 尚も言い募ろうとする私に、妃帥ちゃんの指先が唇をなぞる。

 自分の傑作の出来上がりに満足する様、妃帥ちゃんの瞳が弓形に細まる。

 その視線にゾクリと身体が震えた。


「それに、私が自分のミケを美しく着飾せるのに、理由なんて必要ないのよ」

「…」


 きっと今私は、洋直ちゃんが天條君を見つめていた時と同じ様な目で見ている気がする。

 ライトに照らされた妃帥ちゃんの姿は、それこそ神様が降臨した様に神々しい。妃帥ちゃんは火傷跡を気にしている様だけど、全く気にならない程の圧倒的美。

 そう思う反面ーーー。

 洋直ちゃんや他の女の子達もこうやって夢を見せる様なことをしていた事にも気付く。

 夢に浮かれた少女達を誘惑するニンフか、それとも少女達を生け贄にする魔女か。

 その美しさと慈愛に満ちた振る舞いで人を魅了し、秘めた残虐性を上手に隠す。