桜の花びらが室内に舞う中で、赤い着物の少女が佇む。
キリッと睨みつける薄茶色の瞳、火傷のような跡、赤いビーズ。
我が儘で可愛いらしい一面と、純粋な振りして心を抉る悪魔な一面。
………結局名前教えてもらえなかったな。
ちょっとしんみり。
ーーーけれど。
「清維?」
「…」
目的の場所である図書室の扉の前に止まる。
「なんかあった?」
「え、いや」
「開けづらい?私開けるよ」
「ま、待って綴っ」
躊躇う清維を置いて、器用に本を持ちながら扉を横に開けた。
ーーー何かを思い出した瞬間って。
「また、お前か」
「私がやったなんていつ言ったのかしら」
「しらばっくれるなよ」
出会っちゃうもんですよねー。
室内の中央。男子数名と、着物の。
「あ、」
「あ」
私と黒髪がふわりと揺れた。あの周辺きっといい匂いがする。変態か、私は。
「へ、と」
「綴!」
間抜けな声とともに着物の少女が爆走してこっちに来る。
でも、
「きゃ」
「ちょっと!」
着物の少女が床につまづきかける。慌てて本を投げ出して、彼女を受け止めた。
あ、いい匂い。
「だ、大丈夫」
「うん大丈夫。ありがとう、綴」
160ピッタリの私に対し、ギリ150センチあるかないかの着物の少女が凭れてくる。
長い黒髪を左右に分けて彼女は、私を見上げて微笑んだ。
ドッキューン!バッキューン!ドドーン!と謎の擬音とともに、心臓ががなる。



