雰囲気は本館より厳かで、全体的に静かに感じる。
天條君は中の方で待っているのかな?
そう思って別館の入り口付近に近づけば、
「あ」
入り口である両扉に背を預けた一際輝く男。
この男を見て精神が落ち着くとは、私は相当疲れているらしい。
「天條君お待たせしました…」
「…遅かったな」
紺色のワイシャツに黒いスラックスと言う極シンプルな装いなのに、お忍びで別荘に遊びに来た何処ぞの王子様みたいに見えた。
「草臥れているな」
子供の様に首を傾げて私を見つめる天條君。
今思ったけど、天條君にとっても知り合いではあるんだよね…一応報告はしておくべきか。
「あー…色々ありまして」
ざっくり簡潔に、天女目さん達の間に起きた事を伝えてみれば、
「別にいいんじゃないか」
「え!」
思ってもみない反応が返って来て驚いてしまった。
「妃帥は喜ぶと思う」
「え!」
「俺も見たかった」
「え!」
え!と言うだけの人間に成り果てている私を置いて「ほら行くぞ」と扉を開けて中へと招く天條君。
「つづ行こう」
「う、うん…そうだ」
凌久君に促されるが、四葉さんの姿がない事に気づく。後ろを見れば、一歩下がった所で静かに佇んで私達を見守っている。
先程の大真面目に暴走する四葉さんはいなくなっており、嫋やかで大人な四葉さんに戻っていた。



