特に獅帥君の名前を出した時だけ妙に反応しているとは思ったけど、ここまで怒らせるとは。
内心冷や汗ものだが、恐怖演出にも笑顔を崩さずに、天女目春日を真っ直ぐ見つめた。
「そうだ、お疲れなら獅帥君のお菓子でも頂いたらどうですか?甘い物って疲れた脳に良いって聞きますし。私にも獅帥君自ら口に放り込んでくれたんです。とっても美味しかったですよ」
更に笑って言えば、周囲の着物美女集団の顔が般若へと変貌する。
眦は吊り上がり、口元は引き攣る毒花達。
流石ボスの天女目春日は表情は変わらないかと思いつつも、手が震えているのを見て、効いてはいるのかと冷静に分析した。
喧嘩を売ったつもりはないし、あっちから何なら喧嘩を売られて、特大で買ったわけだが、想像以上のお値段で買い取ってしまったらしい。
………これ以上のやり合いは不毛かな。
「ーーー四葉さん、凌久君行きましょう」
「は、はい」
険しい表情で見守っていた四葉さんは、慌てて先導し始める。私と凌久君はそれに慌てずについていく。
天女目春日の横を通る時に、小さな囁き声が聞こえた。
ゾクリーーー背筋が震える。
何て言っているかは分からない。けれど、呪詛めいた禍々しい言葉を吐かれた気がして、足が早まる。
結局廊下を曲がって視界を切るまで、突き刺す様な視線は離れなかった。



