過つは彼の性、許すは我の心 壱



「俺としては、先輩に危険がなければどうでもいいです」

「あのなあ…俺だけか、ここでまともなのは」

「まとも?誰がや」

「ああ?」


 今の流れで喧嘩になりようがない筈だが、海祇渚と土師凌久が喧嘩をし始める。
 
 彼女がこの場にいたら心から楽しそうに「またやって」なんて微笑むのだろう。

 その光景が当たり前になっている事実に、彼女はやっぱり凄いなと思ってしまう。

ーーーここに 俺らの様な人間(・・・・・・・)が集っている事自体有り得なかった。

 それぞれが他人と深く関わることもないし、関わっていても上澄みをなぞる様な付き合いしかしていなかった。

 彼女に出会う前は。

 他者の傷に気付いていない訳ではないし、気になってはいるけれど深くは聞いて来ない。それでも無関心という訳ではなく、自分達の深入りして欲しく無い部分に、上手に触れない様に関わってくれる。

 他者の暖かみを知らずに生きて来た自分達にとって、彼女の関わり方は心地良かった。

 生ぬるくも、揺蕩えるような感覚。

 窮屈な人生で訪れた平穏だった。

 それを作り出してくれる彼女の人生が、今後も穏やかで、幸せに満ち足りていて欲しいと願う。

 未来を願えるぐらいには、誰か1人の幸せを願えるぐらいには、人として成長出来たと思いたい。
 
 きっとこれも彼女のお陰なんだろう。

 居心地の良い彼女の傍にこれからもいられたら…なんて、人もどきが言うのは烏滸がましいのかもしれない。