「俺としては、先輩に危険がなければどうでもいいです」
「あのなあ…俺だけか、ここでまともなのは」
「まとも?誰がや」
「ああ?」
今の流れで喧嘩になりようがない筈だが、海祇渚と土師凌久が喧嘩をし始める。
彼女がこの場にいたら心から楽しそうに「またやって」なんて微笑むのだろう。
その光景が当たり前になっている事実に、彼女はやっぱり凄いなと思ってしまう。
ーーーここに 俺らの様な人間が集っている事自体有り得なかった。
それぞれが他人と深く関わることもないし、関わっていても上澄みをなぞる様な付き合いしかしていなかった。
彼女に出会う前は。
他者の傷に気付いていない訳ではないし、気になってはいるけれど深くは聞いて来ない。それでも無関心という訳ではなく、自分達の深入りして欲しく無い部分に、上手に触れない様に関わってくれる。
他者の暖かみを知らずに生きて来た自分達にとって、彼女の関わり方は心地良かった。
生ぬるくも、揺蕩えるような感覚。
窮屈な人生で訪れた平穏だった。
それを作り出してくれる彼女の人生が、今後も穏やかで、幸せに満ち足りていて欲しいと願う。
未来を願えるぐらいには、誰か1人の幸せを願えるぐらいには、人として成長出来たと思いたい。
きっとこれも彼女のお陰なんだろう。
居心地の良い彼女の傍にこれからもいられたら…なんて、人もどきが言うのは烏滸がましいのかもしれない。



