過つは彼の性、許すは我の心 壱



 怯えただろうに、怖かっただろうに。

 押し付けられた折り畳み傘が、温もりが。

 彼女との穏やかな時間が。

 安らぎ等欲しいとも思わなかったのに、随分強欲になったものだと嗤う。


「お前にも役目(・・)があるってことか」


 海祇渚は納得した様に腕を組んだ。

 話が早いのは助かる。


「俺も暫くは派手には動けないんで、本当に頼みましたよ」

「…お互い苦労すな」

「ええ全く」


 自由とは程遠い人生だがーー…ああでもそれは俺らだけじゃ無いか。

 あの朴念仁に、あの女。

 少しだけあの女に同情した。


「学内なら俺がいるからどうとでもなるし、流石にお前に言われたら天條側も動かざる得ないだろう。ただ、その天條の家でのことは…頼んだぞ凌久」

「分かってる、俺かてつづには平和でいて欲しい」


 それに、と土師凌久は付け加えた。


「天女目にちょいした知り合いがおるさかい、最悪なんかあったらそっち頼る」

「知り合い?」


 俺の問いに頭の後ろで両腕を組む土師凌久は「色々あって親の元じゃ暮らせんと、ちょおっと京都で暮らしとった」と話す。


「色々あってなんや?」

「まあそら色々やで」

「けったいな伝手ちゃうねんな?」

「うん、俺らよりまとも」


 本当かよと、海祇渚がジト目で土師凌久を見ているが、探りをのらりくらりと交わしている所から、きっとここで言う気はないんだろう。