彼女なら気づくだろう、鈍くはない方だ。
きっと自分に何かあれば悲しむだろうし、引き摺るだろうな。
自分にはその価値が無いのに。
優しい、優しい彼女。
どうかこのままでいて欲しいと願うと共に、嫌でも変化は訪れる。
それは確信だった。
「ーーー分かりました、これからは気を付けます。でも、このままではいられない。遠い未来に俺は、先輩を傷付ける事になります」
眉を跳ね上げる海祇渚には悪いが、こうなっては時間稼ぎをするしかない。
細心の注意は払っているけれど、どうにもできない事がある。
冷たい目で睥睨する癖に、疑いの眼差しを向けるアレが。
妄執に囚われたあの老獪が。
「どういう意味だ」
「俺にも事情があります。いやでもそうなる。今の俺ではどうにも出来ないんです」
「…」
大事な相手を必ず傷付けるなんて、意味が分からないだろう。
でもこればっかりは俺が何でアレ、どうにも出来ない事だった。
「だから、お二人には傍にいて欲しいんです。役目は必ず果たしますから」
ーーー人なんてどうでも良かった。
自分の存在意義を考えれば、死んだ方が世の為だろう。
そう考えていたのに、彼女と会ってから随分変わった。
『はい、これ!傘!じゃあね!』
丁度荒れていてた時に、偶々会ってしまった彼女。



