過つは彼の性、許すは我の心 壱


 あの後、彼女はパニックを起こしていたが、あの女(・・・)がベタベタしてくれたお陰で、彼女もそれほど落ち込まずに済んだ。

 ホッと胸を撫で下ろす傍ら、放送で戻っていない生徒は教室に戻れとお達があり、自然と解散になった。

 さてどっかで時間でも潰そうか。

 そう思った所に、目線でこの後集合と言われてしまった。

 そして、周囲に気取られないよう生徒会室に集ったわけだが。


「ほんで、やったのは自分か?」


 結局あの場は有耶無耶に出来たけど、海祇渚は誤魔化せなかった。

 きっとこの男の妹も気付いている。

 海祇渚と海祇夏波は此方に近い感じはしていたが、やっぱりかと納得する。


 なら、隠す必要もない。

 
「そうです」


 俺の言葉にはあと溜息を吐いた海祇渚は、前髪を掻きむしり「阿呆がもっと上手に(・・・)やらんかい」とお小言。

 普通なら何やっているんだ!となるが、ここにはそう言うのに縁が無い人間しかいない。


「すみません、思った以上にやり過ぎて」


 暴力的な部分はコントロール出来ると思っていたのに。

 あの辺を通り掛かったのは本当に偶然だった。


『見ろよ、この女』

『なんだ?』

『女王様達の機嫌に触れたんだと』

『へえ可愛いじゃん…女王様達はなんて?』

『好きにしろだって』

『なら…、』


 彼女をどうするか。

 下劣に語る奴らの話を聞いていたらブレて・・・しまった。