過つは彼の性、許すは我の心 壱


 こうなるんだよお!と、実演するつもりはなかった。

 私の贅肉に埋まったバタフライナイフから、呆然と手を離す姉小路先輩。

 思い出したかの様にじわじわと腹部から血が滲み出てきて、痛みもじわじわ来る。


「嘘、私、嘘」


 姉小路先輩落ち着きましたか?なんて言う気力もなく、その場に蹲る。


「大丈夫ですか!?あのしっかり、」


 モサイ人が隣でなんか言っている。

 それより。


「姉小路先輩」

「へ、あ」

「行ってください」

「え?」


 私は姉小路先輩を見上げる。ああやっぱり綺麗な人。

 果たして私は笑えているだろうか。


「私は学園に、侵入した、暴漢からこの人を庇おうとして、刺されて、犯人は、逃げたことにします」


 口調が途切れ途切れだけど、アドレナリンどばどばで頭はいつも以上に回転する。ああテストの時もこの回転力があれば。


「だから、行ってください。先輩は何もしてない知らない」

「で、も」

「先輩!」

「っ」


 腹に響いた、痛い、悶絶。


「いや、でも私、」

「行って!」


 私の怒鳴る声に、先輩は弾かれた様に教室を飛び出る。


 そして、


「モサイさん」

「…え、モサイ?」


 だって、名前知らないし。


 出来るだけ腹部をこれ以上傷つけない様床に転がる。


「秘密にして」

「…」

「貴方も大事はごめんでしょ」


 そんなモサイ格好しているのだってそういう理由でしょ。

 こくんと頷く彼女に、更に私は続けた。