こうなるんだよお!と、実演するつもりはなかった。
私の贅肉に埋まったバタフライナイフから、呆然と手を離す姉小路先輩。
思い出したかの様にじわじわと腹部から血が滲み出てきて、痛みもじわじわ来る。
「嘘、私、嘘」
姉小路先輩落ち着きましたか?なんて言う気力もなく、その場に蹲る。
「大丈夫ですか!?あのしっかり、」
モサイ人が隣でなんか言っている。
それより。
「姉小路先輩」
「へ、あ」
「行ってください」
「え?」
私は姉小路先輩を見上げる。ああやっぱり綺麗な人。
果たして私は笑えているだろうか。
「私は学園に、侵入した、暴漢からこの人を庇おうとして、刺されて、犯人は、逃げたことにします」
口調が途切れ途切れだけど、アドレナリンどばどばで頭はいつも以上に回転する。ああテストの時もこの回転力があれば。
「だから、行ってください。先輩は何もしてない知らない」
「で、も」
「先輩!」
「っ」
腹に響いた、痛い、悶絶。
「いや、でも私、」
「行って!」
私の怒鳴る声に、先輩は弾かれた様に教室を飛び出る。
そして、
「モサイさん」
「…え、モサイ?」
だって、名前知らないし。
出来るだけ腹部をこれ以上傷つけない様床に転がる。
「秘密にして」
「…」
「貴方も大事はごめんでしょ」
そんなモサイ格好しているのだってそういう理由でしょ。
こくんと頷く彼女に、更に私は続けた。



